そしてツール・ド・フランスが始まった <世界見聞録>

草原の特等席でテントを張ってツール・ド・フランスの初日のスタートを観戦する、こんな興奮はまたとありません。(ひとつ前の投稿を参照)

前回の観戦は、2003年のパリでの記憶まで遡ります。
ツール・ド・フランス100周年を祝ってパリでのプロローグ、そして個人タイムトライアルを観戦した時以来の興奮です。(その時の様子はこちらです)

さてレース当日の朝。テントのファスナーを開けると、朝日が眩しい。ここに到着してから一番の天気です。コンディションは整いました。


テントを畳んでザックの紐を締め、人々が集まり始めた方向へ足を向けます。小さな町は沢山の人たちがやってきて、プロ選手たちがやって来るのを今か今かと待ち構えています。この待つ時間が楽しい。ワクワクした高揚感が風船のように膨らんでいくのを感じます。


それは目に映る人たち全てに共通した感覚でしょう。ツール・ド・フランスはその年々でコースが変わります。それが発表された時の町々の興奮はいかばかりか。きっと2020年の東京オリンピックでは聖火リレーで同じようなことが日本でも起こるのだと思います。ツールのコースとなった町は各々が工夫を凝らしてデコレーションします。それも見る楽しみのひとつ。なんとも巨大なセーターが出迎えるこの風景、いったいどうやって作ったのやら。町の人の熱意が伝わって来ます。



モンサンミッシェル島へ向かう道路は、少しずつ、少しずつ、人で埋まっていきます。行き過ぎる雲、清々しい風、あー気持ちいい。時間と共に空の青さが増していきます。雲も切れてきました。




通りは飾り付けられ、テレビカメラが陣取り、浮き立つ雰囲気はお祭りそのもの。



選手が来る前にスポンサーのキャラバン隊がやって来ます。ファンのお目当てはクルマから配られる様々な商品。



そして待つこと2時間、やってきました。


選手たちはポルトルソンの町からモンサンミッシェルを往復するパレード走行でレースファンを魅了します。往路を行く選手たち。レースマネージャが乗る赤いクルマに導かれた色とりどりのジャージ。声援が上がります。


やってくる、やってくる。


どんどんやってくる。




選手たちがモンサンミッシェル島へ辿り着いたのち、復路をやってくる前に上空を空軍がトリコロールのスモークを引いてやってきました。編隊飛行で今年のツールの幕開けを祝います。ちなみにツールの最終日、パリでのゴールの時もこの編隊飛行がやって来ます。今年はそれも見れるのだなと思うと興奮が増します。



モンサンミッシェルに着いた選手一団を待つセレモニー。神に祝福された後、また列となって一本道を返って来ます。




そして復路をやって来る選手の一団は、モンサンミッシェルを背景にして実に艶やか。絵になります。



ツールの隊列は周囲の興奮する観客とは対照的にリラックスした空気を運んで通り過ぎていきました。

待つ時間。


カラフルな風が目の前を吹きすぎた後に静寂が戻って来ました。興奮の余韻は空の雲と共にゆっくりと流れていきました。




そんな一瞬のために何が楽しいの?と思われたかもしれません。これはレースという名のお祭りなのです。選手が来る「その時」を「その場」で味わう楽しみ。その選手たちが来るまでの興奮、ワクワクがツール・ド・フランスの魅力です。興奮を纏った色とりどりのカラフルな風、選手が目の前を通り過ぎるのは30秒にも満たないでしょう。その僅かな時間と、それを待つ時間、この二つを楽しむのが生のツール・ド・フランス。日本人でもこれほど興奮するのですから、地元の人、この国の人が興奮しないわけがありません。その空気の中に自分を浸し、同じ高揚のうねりを楽しむのです。これぞフランス。

さあて、選手たちは行ってしまった、今日はどこに行こうかなあ。予定は自分次第、誰にも縛られず、好きなようにその場を楽しむ、なんとも贅沢な旅だなあと思います。


ツール・ド・フランスを追い掛ける

このツール・ド・フランスのスケジュールに合わせてヨーロッパの旅を組み立てた私は、まずこのスタートのモンサンミッシェル、そののち例年通りフランスの外へ飛び出した先のスイス、そして最終日パリでのゴール、都合3回の追っ掛けを計画しました。モンサンミッシェルで見送った一団を別の町で待ち受ける。夢がかないました。



次の追っ掛けの場所はスイスの首都ベルン、ツール・ド・フランスの19日目です。そこへ行くまでにベルギー、オランダ、ドイツを回って友人を訪ねます。その様子は後ほどということにして、ベルンへ一足飛びで行ってみましょう。パリのゴールの6日前のことです。ツール・ド・フランスの裏方さんの頑張りも拝見できる貴重な経験が待っていました。その様子を次回に。


ではでは@三河屋


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